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#傷の周りをそっとなぞる #弱いまま強くある #目撃者(ウィットネス)としてのケア #トラウマと文化精神医学 #恥じずに傷とともに生きる #
『傷を愛せるか 増補新版』は、精神科医で文化精神医学・医療人類学を専門とする宮地尚子が、トラウマ、喪失、ケア、そして人が傷を抱えたまま生きることを考察したエッセイ集である。初版に文章を加えた文庫版で、2022年に筑摩書房から刊行された。著者は、心の傷を完全に消し去る処方箋があるという前提を退け、癒えない痛みを急いで克服の物語へ回収しない。本書が問うのは、傷を「愛する」ことを美化や肯定へ取り違えず、傷の存在を認め、必要なら他者の好奇から守りながら、恥じずに生きるにはどうすればよいかという点である。バリ島、ブエノスアイレス、金沢、米国滞在時の観察や家族に関わる記憶を織り込み、臨床知と日常の感覚を交差させる。体系的な治療マニュアルではなく、ケアする側・される側の無力さにも目を向ける思索的な一冊である。